視空間障害のリハビリテーション
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視空間障害のリハビリテーション 神戸大学医学部保健学科 作業療法学専攻 種村留美 1.視覚の基本機能 視覚は、視力、視野、視知覚、色彩弁別、方向性認知、形態認知などのさまざまな機能を駆動して、「視る」という行為が成立する。視覚に関する障害を有した人に有効なリハビリテーションを提供しようと思うと、その基本機能を理解しておくことが肝要である。 視覚に関する脳の機能について述べると、頭頂連合野では視覚野から空間を認知するための情報を受け取って、見たものの空間的位置関係や向きなどを鑑別する。側頭連合野では、視覚情報から得た形や人の顔、図形などを意味のあるものとして捉え、さらには色の情報を受け取り、色を区別する。後頭連合野では、視覚野に入った情報を元に、より高いレベル(絵を鑑賞するなど)で視覚機能を果たしている。 2.視覚に関する高次脳機能障害 視覚認知障害には、以下1から4の障害が挙げられる。 1.視空間知覚の障害として、視覚座標系異常、遠近視・立体視・運動視の障害、変形視 2.注視空間における障害として、バリント症候群、半側無視 3.地誌的障害として、街並み失認、道順障害 4.視覚失認、などであるが、本講のテーマは、視空間障害なので、おもに1から3について述べていくこととする。 3.視空間障害のリハビリテーション 本講ではおもに半側無視とバリント症候群についての最近のトピックを述べる。半側無視に対するリハビリテーションは、Robertsonらの、左肢を使用する介入とプリズム眼鏡などのデバイスを利用した介入とが主流となっている。バリント症候群の注視や追視の障害については、Zihlらが眼球運動の視覚走査訓練効果について述べている。これらの紹介を行い、自験例を交えたリハビリテーションについての知見を述べたいと思う。 |