精神科における地域支援について

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クマノミ診療所
作業療法士 郷田 調子

昨年の3月、岡山県立内尾センターは、財政改革の煽りを受け30年の歴史を閉じました。社会復帰センターとして、また地域医療を進める役割を背負っての発足でしたが、地域で生活し続けられるための治療援助をするためには、外来相談、訪問、自由な空間が保障されたデイケア、入院防止と休息目的の援護寮と24h体制の生活支援センターが必要でした。医療面、生活面に限らずさまざまな対応を求められ、その時々で臨機応変に対応できる人と場所と機能が要求されたのです。
地域社会の中で生きていくための援助には、まず、安心できる環境を整えて、一対一の人間関係を作ることが大切です。治療援助者は利用者に暖かい眼差しと関心を持って接することができる心のゆとりと、その人にあった適切な距離感で支え続けられる忍耐も必要です。また、沈着冷静に状況を見極め、自己反省する努力も求められます。
内尾センターでは人が中心にいて、人が集まる場所の提供、集まった人それぞれの物語が展開されるような治療援助が可能でした。安心して気持ちを委ねることができてくると、心が癒され、ゆとりが出来てきます。次第に不安や症状も軽減されて、自ずと次の意欲へつながって、生活の中身が豊かになってきます。
内尾センター廃止反対運動が利用者から起きた時、次々と精神不安定な状態になりながら、存続を願って直訴されるその姿は頼もしく、気持ちのこもった訴えに胸が熱くなりました。利用者、家族の想いが支援センターを残すきっかけになり、また診療所開設の火種となったのは確かです。
クマノミ診療所は、このような背景で開設しました。小さくとも暖かな安らげる家を目指して、一人一人が大切にされていると実感できるデイケア、ナイトケアにしたいと日々努力しています。
当日は、内尾センターの歴史を振り返り、出会った方々の物語に触れ、地域支援をする上でのポイントをお話したいと思っております。




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