Narrative Based Medicine(NBM)と作業療法

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教育講演
テーマ:Narative Based Medicine(NBM)と作業療法

講 師:目白大学保健医療学部作業療法学科長(教授) 鷲田 孝保

1 はじめに
ひとは、それぞれの人生があり、同じではない。人生は意味をもった全体としての物語りとしてしか記述できない。
作業療法は、その出発において、生活を土台にしたものであったが、科学万能主義の強力な時代の要請の影響を受け、次第に、生活から科学へと軸足を移していった。
現在の社会は、あらゆる分野が相互に絡み合って、展開されている。作業療法も社会の本流と無縁ではない。今回の講演は、Narrative based medicineと作業療法について歴史的な背景を通して、その密接な関連について私論を述べる。

2 作業療法のおかれている今日的時代背景
1) 世界観の対立から調和へ
まず、現代社会は、世界観の対立するパラダイムシフトの時代である。「生活世界」と「科学の世界」との対立である。それは、フッサールが「生活世界(Lebenswelt)」という思想を提案したときから始まっている。科学は、ガリレオの数学による記述とベーコンによる実験を繰り返して検証する「帰納法」などの手法を手にいれ、デカルトの科学哲学、要素還元主義よって、客観性、普遍性、論理性を獲得し、全世界に君臨するようになる。
 私は作業療法における世界観の対立をKielhofnerの歴史的な視点をもとにまとめた。次の時代は、対立から調和の時代になる。
2) 実証主義とSSM
科学の世界と生活世界は、モノとコトの世界と考えることができる。科学はモノを扱うことに優れている。しかし、人間の社会や個人は、反復のない1回限りのできごとの連続である。そのためには実証主義ではない新しい方法論が必要である。それがソフトシステムズ方法論である(SSM)。

3 Narrative Based Medicine(NBM)の歴史的背景
医療の中で起こっているEBMとNBMは、ちょうど作業療法での歴史的課題と一致している。患者の人生や生活と一体化していたやまい(illness)が、科学の発展によって、患者そのもの(patient)と客観的な病理学的な実態としての疾病(disease)に別けられ、疾病は臓器別になり、生物医学的側面が強調され、ますます専門分野が細分化され、患者そのものが置き忘れられてしまった。医療費の高騰、社会資源の有効活用の要望などから、実証的な研究成果に基づいた効果的な医療への政治的、経済的な要請からEBMが急速に発展してきている。他方で、患者を無視した医療に対する非難から、患者の人生や生活との一体化した医療への要望も強まり、NBMが生まれてきたといえる。その関連性について述べる。

4 作業療法の専門性
さて、作業療法の専門性としての特徴は、以下5項目にわたって説明する。
1) 作業の目的性、意味
2) 文脈
3) 作業的存在
4) ストーリー性
5) ドラマ性

5 不登校児の15年前の作業療法がその人生に与えたこと
15年前に担当した不登校児が、15年後にどのような人生を歩んでいるか。SSMに基づいた報告

6 おわりに


SSMに関する最新文献
 内山研一:現場の学としてのアクションリサーチ、SSMの日本的再構築、白桃書房、2007




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